okadamktの日記

That's what we call a tactical retreat.

大坂屋花鳥

 ある日の土曜日、京成小岩、むかし家今松師匠、「大坂屋花鳥」。

主な登場人物は、吉原の花魁、大坂屋花鳥。自らの鬱積と重ね合わせながら花鳥に溺れ、辻斬りで200両を奪い、そして花鳥が吉原に火をかけて逃がしてやる無役の旗本、梅津長門八丈島に島流しになった花鳥とともに島抜けをする、花鳥の昔の恩人、博徒の親分、佐原の喜三郎。

江戸に戻った花鳥が浪人をしている梅津をゆすったことから、結局三人とも捕らえられ、梅津は切腹、花鳥は斬首。喜三郎はやがて恩赦で放免されるがすぐに病死してしまう。

これは人情話なのだろうか。殺伐とした救いのない話なのだ。今松師匠はそれを淡々と80分にわたり話していく。江戸前の乾いた批判的な視点。

現代小説の傑作、アゴタ・クリストフの「悪童日記」を思い出す。

ぼくらが食糧と毛布を抱えて戻ると、彼は言う。「ありがとう、親切だね」ぼくらは言う。「別に親切にしたかったわけじゃないよ。ぼくらがこういうものを運んできたのはね、あなたがこういうものを絶対に必要としていたからなんだ。それだけのことさ」彼が、また言う。「どうお礼すべきかも分からない。きみたちのことは、けっして忘れないよ」彼の目が涙で潤む。ぼくらは言う。「あのね、泣いても何もならないよ。ぼくらは絶対に泣かない。まだ一人前でないぼくらでさえ、そうなんだよ。あなたは立派な大人の男じゃないか・・・」彼はぼくらに向かって、笑みを作る。「きみたちの言うとおりだ。ごめんよ、もう泣かないから。涙なんか見せちまったのは、ただもう疲れ果てているせいなんだ」(「悪童日記」p62)

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 落語会のあと、「悪童日記」を読み返した。

(2006年11月14日, mixi改)