okadamktの日記

That's what we call a tactical retreat.

美しい日本『語』の世界: 江國香織 『竹取物語』

たとえば、伊勢物語の芥川。恋い焦がれ、夜露を「あれは何?」と問うような彼女が、あっという間もなく鬼に食われてしまう物語。

業と無常の二項対立からの脱却を、原罪という概念を介さずに描くためには、儚さが不可欠なのである。

竹取物語」に材をとった立原位貫の版画の連作もまた、業と無常と儚さの中にある。江國香織はこの版画をみて「息をつめて見入ってしまう気持ちに似て」と記している。

この版画に寄り添うようにして生み出された江國香織による「竹取物語」の現代語訳は、その美しい端正な世界を、現代社会にも通じる言葉として描くことに成功している。

誰が悪いのでもなく、ただ「生きる」という世界の意味が、短い物語として語り直されている。登場人物のいずれも、そして作者も「それを止めることはできない」。そんな世界の肯定が語られている。

美しい日本『語』の世界がそこにある。

(2013年12月08日, mixi 改)