okadamktの日記

That's what we call a tactical retreat.

フレームを外して世界をみるために: 山岡道男/淺野忠克 『行動経済学の教室』

副題に「世界一やさしい」「ガブッ!とわかる」とある言葉の通り、行動経済学についてわかりやすく書かれた入門書。高校生の子どもにも勧めたくなる。

まず、書籍としての導入が上手い。

”はじめに”で、「なぜあなたはお金を貯められないのか?」「お金を貯めるために行動経済」と書かれている。この導入に、いったいどれだけの人が抗えるだろうか? 

お金は万人共通の悩み、その悩みに対して、「ここに答えがありますよ」と誘い、行動経済学という「言葉としての目新しさ」「納得性の予感」「これまでとの違い」で訴求してくるのだ。

本論では、”はじめに”でざっと触れた内容が、丁寧に、そして具体的な例で語られていく。

重要な概念は、すこしづつ表現や例を変えながら、わかりやすく記述されている。よい教科書の形がここにある。入門書としての教科書はかくあるべしと言う構成なのだ。高校の頃にこんな本に出会っていたら、その後の人生の進路を変えたかもしれない。そしてなにより、もっとお金が貯められたかもしれない。

記述されている内容は、入門書とはいえ、十分に大人である我々の知的好奇心を満たしてくれる。

たとえば、テレビショッピングとは、どのような構成で人々の購買に影響を与えているのか?

それは決して商品の連呼でも、わざとらしい「素敵~」というゲストの言葉でもないことが、本書の中で明らかになる。。スーパーについても同様だ。

この本を読んだ後では、街を歩いても、スーパーで買い物をしていても、行動経済学の言葉で世界を再構成することが止められなくなる。世の中に存在する見えない仕掛けを、自分の目で発見したくなる。

「フレームとは、意思決定(選択、判断)のために与えられる情報が提示、表現される方法のこと。情報の提示・表現の仕方や情報の受け手の意識によって、意思決定に大きな違いが生じる」

フレームを外して世界をみるためには、自分自身のフレームが意識できなくてはならない。本書は、行動経済学の入門書として、その最初の一歩を与えてくれている。