okadamktの日記

That's what we call a tactical retreat.

機能として割り切る客体との距離感: 架神恭介/辰巳一世 『完全教祖マニュアル』

教祖になるためのマニュアルという体裁をとった文明批評書。

なにかに対して展開した批評が評価を受けるためには、客観性が必要となる。客観性を保つためには、対象となるものやことに対して、複数の視点と引いた視点が必要となる。

世界宗教の基本要素は、教祖・教典・教団であると言われている。本書は、従来、批評の対象となりにくかった世界宗教の教祖を、機能として割り切り、「教祖となるために実践的であるためには?」という視点からのその批評を試みている。従来の文明批評では重視されてこなかったアプローチである。

もちろん、客体に極めて近接することで逆にそのものの本質を描き出すという手法にはリスクがある。本書では複数の宗教を比較しながら、これを一般論として論旨を展開することで、客体との一定の距離感を保つことに成功している。本書の軽い語り口もまたその方法論のひとつといえる。