きっかけ
たぶん、小学校の3年生ぐらいまで、私は本を読むことがない子どもだった。仲のよかったN君はドリトル先生の全巻を読んでいたりしたけれど、私はそれをどうとも思っていなかったし、すごいなとも思っていなかった。単純に、本を読むことに興味がなかった。
実際はそもそも本を読むということが上手くできなかったのだと思う。本を読むということがどういうことなのかもわかっていなかった。運動も得意ではなかったし、学校もよく休んでいた。
本を読むようになったのは、母親が「魔ほうのボール」という本を買ってきてくれたことだった。なぜその本だったのかはわからない。覚えているのは、私は学校を休んでいて、「休んでいるならこの本でも読んだら」と買ってきてくれたということぐらいだ。
「魔ほうのボール」は面白かった。ボールのような形状をした宇宙人と少年が友だちになる話だったような気がする。ちょっと自信のない主人公の少年が、魔ほうのボールに助けられながら、少しずつ自信をつけていくような話だった気がする。しかし、記憶はおぼろげだ。いずれにせよ、このとき初めて、「本って面白いんだな」と私は思った。
その後、同じシリーズの「わんぱくロボット」という本を買ってもらった。こちらはあらすじを少しも覚えていない。ただ、すごく面白かったという記憶だけけが残っている。
この2冊が私が本を読むようになったきっかけだ。それから私は本をよく読む子になった。運動は不得意のままだったし、学校もやっぱりしばしば休んでいたが、本は友だちになった。
検索してみると、最初の2冊はどちらも偕成社の『世界のこどもエスエフ』の本だということがわかる。エスエフが私の世界を変えた。それは確かなことだ。