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okadamktの日記

That's what we call a tactical retreat.

地域からの政治を考えるきっかけに: 小田りえ子 『ここが変だよ地方議員』

書籍



普通の企業人から川崎の市議会議員に転身した著者は、転身組だからこその違和感をブログで4コマ漫画として描いてきた。本書はそのブログを整理して書籍化したものである。地方議会や地方行政を告発するためのものではなく、ごく普通の人からの目線で、「もっとこうであればよいのに」という願いと奮闘とが描かれている。

見開き2ページの左側には4コマの漫画が配置されている。ここを読むだけでも、なんだか笑ったり、考えさせられたりする。地方議会の様子や議員と行政との関わり方についてわかりやすく触れることができる。政治を特別視するのではなく、人々の営みの延長線上に捉える著者の柔らかな視点が溢れている。

本文には、地域の行政と政治を入門的に考えるきっかけとなる素材が配置されている。普段あまり考えることのない、それでいて、ごく身近な生活に直結している地域の行政と政治について、「ああ、こんな感じなのか!」という発見的な驚きがある。

文章もよみやすく、自分たちにとって暮らしやすいまちをどう作っていくかを考える最初のきっかけになる一冊だといえる。

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人は誰でも事情を持つ。お互いが持つその事実を、どれだけ柔らかく受け止められるかどうかで、人生や社会の豊かさはずいぶんと変わる。

お互いのそれぞれの事情を広く柔軟に考えられるかはこれからの新しい地方政治に求められる姿のひとつでもある。旧来通りシニカルに「政治の世界」という言葉を使えば楽だ。しかし、それでは社会に創造的に参加するということにはならない。矛盾があるが、奇妙なこともあるが、それはそれぞれの事情として割り切り、あるときは受け流し、あるときはぶつけ合い、着地点を見つけていく。それはシニカルであることよりもずっと強い生き方なのだ。

著者は、そんな事情を受け止める日々に生きている。本書から伝わってくるのは、そんな著者の地方議員としての日常であり、思いだ。シニカルになりたいときもあるだろうに、そんな気持ちを本書ではさっぱりとユーモア溢れる語り口と4コマの漫画へと昇華させている。

そんな著者の思いや姿勢が、本書では「問い」と「答え」として投げかけられている。起こっていること、感じたこと、考えたこと、疑問、そして奮闘が、本書では点描のように描かれていく。

地方議員にも草食系はいるのか? なぜ女性議員はカラフルなのか? 市民行事や式典で頼まれる挨拶に求められていることは? 地方議会での一般質問とは? 答弁調整とは? 予算資料のあり方とは? 地方における議会と行政との関係とは? 国と地方の仕組みの違いは?

そこには著者からの様々な提言がちりばめられている。さりげなく書かれているが、地方の政治に関してほんの少しでも改善するだけでどれだけスムーズになるのかという願いがこめられている。それは、地方を重視し、地方から社会を変化させていきたいという著者の切実な願いと表裏一体なのだ。

それぞれの事情をよいとかよくないとか断定しても前には進めない。しかし何もしないのでも前には進めない。世界は矛盾に満ちている。矛盾に怒りをあらわにして立ち向かうのもひとつの方法ではある。そしてもう一方の対極に、世界の矛盾を柔らかに受け止めながら、笑顔で切り返しながら、その矛盾をすこしずつ解きほぐしていく手法もある。本書のアプローチは明らかに後者だ。

政治をシニカルに語る時代はそろそろ終わりにしてもよいのかもしれない。新しいアプローチを模索することが政治や地方を本来の意味で明るくし生き生きとさせるのではないか。本書はそんな予感を感じさせてくれる。