okadamktの日記

That's what we call a tactical retreat.

ヴォイス

ル=グウィン、西のはての年代記 II、「ヴォイス」(Voices)。西のはての南部に位置する海港都市アンサルに暮らすメマー・ガルヴァという少女の物語。そしてそれは「問い」と「答え」の意味に関する物語でもある。

「ヴォイス」の中で問いと答えの関係はかく語られる。

かの優れた読み手、ダノ・ガルヴァはこう言った。『わたしたちの求めるのは真の答えではない。我々の探す迷い子の羊は真の問いだ。羊の体のあとにしっぽがついてくるように、真の問いには答えがついてくる』(p.177)

しかも得られる答え(お告げ)は隠喩的であり、それが具体的にどのようなことを意味しているのかはかならずしも明かではない。主人公のメマーは思う。

お告げは命令を下すのではない。その逆で、考えるように促すのだ。謎に対して思考を寄せることを、わたしたちに求めるのだ。考えて行動した結果が思わしくなくとも、それがわたしたちにできる最善のことなのだ。(p.191)

メマーの師でもあるガルヴァ家の当主である道の長はいう。

「読むことは、かつてわたしたちみんなが共有していた能力だった」
「もしかすると今こそ、わたしたちみんなが、それを学びなおすときなのかもしれない。いずれにせよ、与えられた答えが理解できるまでは、新しい問いを発してもむだだ」(p. 186)

それはなぜか。

はかりしれない謎にたいして理にかなった思考を寄せる(p. 195)

それこそがもっとも大切だからなのだ。