okadamktの日記

That's what we call a tactical retreat.

刺激的な仮説: 矢作弘 『都市縮小」の時代』

著者は"Smart Decline"(賢く衰退する)をテーマに、「縮小の対価として初めて得られる豊かさがある」のではないかと訴える。20世紀という成長の時代、あるいは「人口増加熱望症候群」の時代からの切り返しについて、アメリカ・ヨーロッパ、そして日本の実例があげられている。

もちろん,"Smart Decline"によって「縮小の対価として初めて得られる豊かさ」が生まれるかどうかは仮説にすぎない。また、その仮説が成立する定性的・定量的な要件、あるいは本当に有効な施策となりえたのかという効果の議論も必要となるだろう。しかし、21世紀の中盤に向かって、"Smart Decline"が都市における生活のあり方と都市設計を考える上で非常に重要なテーマとなっていくだろうことは間違いない。

「人類の進歩と調和」を素直に信じられた時代からの変曲点に我々は立っている。その先にあるものを見るのは我々ではない。それは、たとえば90歳まで生きるかもしれない今10歳の「22世紀を目撃する人々」なのだ。

未来を考えるとき、この本が提示するこんなに刺激的な仮説は他にはない。